2010年5月7日金曜日

西鶴一代女

朝、昼、夜。
太陽の動きとともに、目覚め、気分は上昇し、日没は心に安らぎの時間を与え、人々は眠りにつく。
神様は、一日の時間の流れを、こう作った。

しかし、神様は映画の時間軸におけるルールを決めてはいない。
1日の間に朝が2度きても、1日が夜しかなくてもいい。

溝口健二監督は、黒澤明監督による革命的作品「羅生門」の2年後に、この作品を作った。
プロローグとエンディングをつなげるという、今でこそよく見られる手法だが、この時代ということを頭から消し去ってもなお、他の作品とは一線を画するだけの完成度をみせる。

さらに、この作品の日本音楽、雅楽や小唄の使い方は本当に素晴らしい。
主人公お春の心情、悲しみをこれ以上表現できる音楽は世界中にないのではないか。

溝口監督独特のカメラの長回し、田中絹代さんの年齢幅約40才を一人で演じきる演技、衣装、照明、録音など、どれをとっても完成度は高く、ヴェネチア国際映画祭の審査員たちは正しい評価を下した。

この映画の英語名は「The Life of Oharu」だが、お春の死までは描かれていない、お春にとって夜は寂しさと悲しみの象徴で、彼女の夜は他の誰よりも長い。
しかし、最後に迎える夜は、安らぎと、幸せに変わっていると想像できる。

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