映画を作るときは、観客に何を感じてほしいか、を考えると思う。
感動、恐怖、絶望、孤独、笑い、喜び、
この映画は鬼才ミヒャエル・ハネケが観客をいかに苛立たせるかに焦点を置いた特異な映画であるといえる。
クラッシックとともにこの映画は始まり、ジョン・ゾーンの前衛的なハードコアミュージックに一瞬にして支配される。
このタイミング、選曲によって、この映画が特別な作品であることを感じさせる。
観客を苛立たせることは、感動させるよりも遥かに難しい。
感動させるには誰かを殺してしまえばいいが、苛立たせるには?
頭を使い、アイデアを出す必要がある。
特に演技には細心の注意を払わなければいけない。少しでも間違えば、コメディになってしまうから。
タイミング、アクセント、表情、少しづつ積み重ねなければいけない。
被害者に感情を移入させ、加害者には同情の余地を与えない。
普通の映画では、最初に盛り上がり、中盤に落ち込ませ、最後に何かを得る。
この、基本的な映画のリズムをまったく逆にすることにより、観客により深いキズを与えることに成功している。
また、映画の舞台を閉鎖的にし、衣装、音楽に気を使うことにより、時代背景を消していることも評価できる。いつ観ても、時代が違うから自分には起こりえないという言い訳を観客に抱かせないため、という意味がある。
普段はいい人なために悪い面が目立つのか、普段が悪で、たまに良い人だと見せかけるのか。
ハネケ監督は皮肉している。
決して会ったばかりの他人を家に入れてはいけない。
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