世の中には、不幸のすぐそばにいなければ、生きられない人がいると思う。
考えてみれば、僕もこれに当てはまるところがあるかもしれない。
苦労の先にしか幸せは得られないと思ってしまい、幸せの中にいても、気が付けば苦労の種を探している。
そして自分の苦労を嘆くことに、人生の喜びを覚えてしまう。
この映画の中にはそんな女性のエピソードが挿入されている。
彼女にとって苦悩こそが愛する恋人で、幸せは彼女にとって一番の不幸でしかない。
不幸を嘆き、幸せになりたいと願う自分の姿こそが彼女の幸せなのだ。
「赤ひげ」は医療ドラマの先駆け的な作品で、苦しみを乗り越えてなお生きていく、そこに生の喜びがあることを、強烈な描写において表現している。
また、この時代の日本映画にはめずらしく、女性のヌードシーンが出てくることも、この映画の印象を強くしている 。このシーンではやはりヌードが必要で、それは医療においての恐怖のイメージを抱かせる狙いがあったのだと思う。
少女の心の回復の速さなど、個人的に気になる点はあったが、
それでも何十年たっても黒澤明が描く「赤ひげ」は輝きを放っている。

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