「砂をかぶるとカビが生えてしまいます。」
「砂漠の砂は乾燥してるんだから、カビなんて生えるはずがないじゃないか。」
この意味のわからない会話を理解する必要なんてなく、ただ楽しめるようにならなければ、シュールレアリスムを楽しむことは難しい。
日本のシュールレアリスムを代表する作家、安部公房の原作であるこの作品は、学者が見知らぬ村民に砂漠の中の蟻地獄のような穴の中の住家に泊まらせられ、そこから抜け出せなくなる。
当然そこから這い上がろうとするが、その深い穴の中から外の世界を見るために抜け出そうとする姿は、手塚治虫の「火の鳥黎明編」を思い出した。
勅使河原宏監督はクローズアップを多用し、そこから時間を掛け、じっくりとスライドさせることにより、じわじわと観る者に恐怖の感情を与える。
音楽も非常に効果的で、映像のタイミングにあっていることから映像が出来上がってから音楽をつけたと思われ、その不協和音は、恐怖のイメージをより強くする。
岸田今日子さんを起用したことも当たっており、これもまた、雰囲気を高める要因となっている。
また、衣装、セット、照明の質も高い。
日本映画のシュールレアリスム作品として、トップ3には間違いなく入るであろう傑作。

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