2013年9月12日木曜日

イゴールの約束

少年期における感覚、行動の予測ほど難しいことはなく、それは彼らがより本能のままに生きているから。
より小さなことが大きな信頼関係のズレを生み、子供のその豊かな想像力において、あるきっかけにより、それは崩壊へいたる。
少年Igorはアフリカ出身の女性Assitaに母性を見出すことにより、救済へと向かい、物語序盤でみせた冷酷さを本能的に消し去る。
全体的な閉塞感は曇りのみの天候、また衣装にも表れ、唯一Assitaが身につける民族衣装にのみ、その生への欲望、明るさを表現している。
監督のダルデンヌ兄弟が映す青春期における不安感は他のそれとはやや違う種類であり、突出している。

2013年9月10日火曜日

アンドレアス・グルスキー展

彼はおそらく数学的な計算能力が抜群に高いのではないだろうか。
全体的な比率で言うと、より感覚的感性を基礎とするアーティストが大半を占めると思うが、彼はすべてを計算における理詰めで構成していくタイプではないかと感じた。
それは彼が最新の技術を駆使した写真加工を多用するからでもあり、むしろ必然的なスキルであるとも言えるだろう。
絵画との中間的な印象を与える作品は、連作「バンコク」において顕著である。
またほぼすべての作品において、遠近感をなくすようにピントを合わせず、それは観る者にその場にいるかのような錯覚を与えている。
「プラダ」などの作品においての照明と構図による密閉感の表現は高級感を損なわず、他の作品を含めた全てにそれと感じさせる個性はまさに、私たちは一流のアーティストの作品を観ているのだ、という安心感を感じさせてくれる。

2013年9月2日月曜日

黄昏 On Golden Pond

大都市に住めば、私達は一日に何千、何万という人々とすれ違うことができる。彼らは他人であり、自分の人生には一切関係ないのである。
僕は今から友人と会うんだ、避けてくれ、邪魔をしないでくれ。こっちは待ち合わせに遅れそうで、急いでいるんだ。
何をもって、他人を知り合いへ、知り合いを友人へと変えうるのか。
定期的に目を合わせ、言葉を交える。それから、それから。
共通点なのだ。互いに探しているものは。
同じ学校へ行き、同じ課題を解く。同じ職場で働き、同じプロジェクトを手掛ける。同じ友人を持ち、同じ場所で生まれ、同じ場所で育ち、同じ場所で暮らしている。
相手と同じものを見つけるのは、意外に簡単である。
同じ言語を話し、同じ大陸を旅し、今この時を、人間として、この世界に存在している。

物語の最後に映し出される紅葉は、最終章を意味するが、すべてが散り、終息するにはまだ早いということを伝えている。なぜなら、拒否反応を終えてこそ、死の前の安息は得られるのだから。


2013年8月14日水曜日

混沌

みんな嘘つきだ!

そう思うのは、自分が一番の嘘つきだから。

メキシコ1 メキシコシティ

こんにちは。 キューバを後にし、僕が向かったのはメキシコシティ。 ここからは出国の日にちは気にせずに、のんびりと歩き回れる。 キューバからの直行便でメキシコシティに着いたのは午後7時頃。ささっと入国審査を済ませ、まずはATMを探し、メキシコペソを引き出す。キューバでは...